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この仕事領域における第1期以降の能力主義管理の要請は、まずもって職務割当ての転変、職務範囲の拡大、ひんぱんな配置替えへの適応能力であった。 だから総じて同じ仕事をするなかまの数が減るかわりに、一人の職務割当てのなかの単位作業数は増え、ジョブサイクルは長くなる傾向にあるとはいえよう。
すなわち、さしあたり単純労働の目にみえる徴候は後退している。 けれども、アメリカの観察者たちがジャストインタイム(JIT)生産方式をとる日系自動車工場の現場労働について指摘するように、この日本的な多能工の職務のサイクルタイムには、一つひとつはテイラー主義の手法で分析されたまぎれもない単純作業が、手待ち時間を極小にするかたちでびっしりとはめこまれている。
単位作業が考えなくてもできるように単純化されているからこそ、それを重ね合わせて「多能工」の職務が構成されているというべきなのだ。 同じような事態は、ほとんど間断なくやってくる書類や顧客の処理に携わる一般事務職・OLなどの仕事についても生じている。
一般的にいえば、さまざまの作業にフレキシブルに対応する多能性の要求される仕事のほうが、労働者にとって働きがいがある。 しかしひとつの仕事を構成する作業のそれぞれについて、目的や手順を考えて判断する余地も、その遂行ペースを調節するゆとりもない場合には、そこで求められるフレキシビリティとは、神経的な疲れをもたらす複数の単純作業への機敏な適応力にすぎず、そこに労働者のニーズとしての仕事上の決定権はない。
それくらいならいっそ、せめてペースだけは自分でコントロールできるような少数の単位作業からなる仕事のほうがましとさえいえる。 ある作業を手早くすませて手待ち時間を稼ぐ「バンキング」、一種のゲリラ的なさぼりができるからだ。
日本的能力主義の強化は、T般労働の分野では、JIT方式の導入や右の意味でのフレキシビリティの要請を通じて、こうした「バンキング」もむつかしい「多能工」を工場にも事務所にも大量に生み出しているのではないか。 「労働の人間化」はひとつのグローバルな思潮でもあるだけに、サラリーマンとその組合はいま、そんな問題提起を試みることも必要なのである。
そして、蛇足ながらくりかえし確認しておきたい、仕事上の決定権は労働時間内のゆとりとペアになっている。 一定のゆとりなくしては考えた上で判断して納得のゆく仕事をすることができない。

卑近な例では、福祉労働者がゆとりを失えば「弱者」は冷たくあしらわれるだろう。

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